コラム:「分かる」ことと”世界観”

アインシュタインが特殊相対性理論を発表したとき、この理論を”理解できた(分かった)”のは、世界で5人に満たなかったといいます。

この話の真偽はさておき、特殊相対性理論から導かれる結論は、それほど僕らの日常感覚からはかけ離れたものだということでしょう。

特殊相対性理論そのものは、大学2年生でやるレベルのもので、それほど難しいものではありません。
有名な「時間の遅れ」や「長さの縮み」くらいならば、中学レベルの算数ができれば、導けるほどです。

そのような(ほかの理論に比べれば)決して難しくはない理論である特殊相対性理論が、なぜ「世界で5人も理解できなかった」といわれるのでしょうか。

それはおそらく、当時の人々に「時間や空間(長さ)は変わらないもの」という固定観念が強固にあったために、特殊相対論の世界観を理解できなかったのではないかと思います。

僕ら1人1人が世界をどのように見ているか、を1人1人の【世界観】といいます。

人は、自分の世界観にあわないことは、はねつけたり、否定したり、無視したりするものです。

たとえば
・「地球の周りを太陽が回っている」と信じている人には、地動説など信じられないでしょうし、
・「神が人間をつくった」と信じている人にとっては、「人間がサルから進化した」などという理論は、狂人のたわごとに聞こえるに違いありません。
(実際、アメリカでは”進化論”を学校で教えない州さえあるのです!)

特殊相対論が発表された当時の人々も「時間や空間が、人によって異なる」なんてことは、とても理解できなかったに違いありません。

人間はうぬぼれ強い生き物で「自分の信じていることこそが正しい」と盲信しています。
しかも、さらにたちが悪いことには「自分が何を信じているのか」も分かっていない人がほとんどです。
なぜなら、本人はそれを「常識」や「疑う余地のない真理」くらいに思っているからです。

それゆえ、自分の「常識(という名の固定観念)」に反したり、自らの世界観から外れたことを見たり聞いたりすると、僕らはそれを「間違い」と考えます。
(自分が間違っている可能性を考えるのではなく・・・)

その点、それまでの人たちにとって「常識」だった「時間や空間は変わらないもの(絶対空間・絶対時間)」という固定観念を、根底からぶち壊したアインシュタインは、まさに世人の蒙を啓いたといえるでしょう。

現代の僕らにも、無意識に信じている固定観念が、どれだけあるか分かりません。

アインシュタインの
常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションである
という言葉を深くかみしめずにはおれません。

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