双子のパラドックスとかいうアレ

特殊相対性理論によれば、動いていると時間の進みが遅くなります。
ところが「どちらが動いているか」は、あくまで相対的なものであるために
・AさんからBさんを見たときは、Bさんの時間が遅れ
・BさんからAさんを見たときは、Aさんの時間が遅れる
という、わけがわからないよ状態になることを前回まで書きました。

図1:相対論的効果による時間の遅れ。AさんからBさんを見た場合は、Bさんの時間が遅れる。逆にBさんからAさんを見た場合は、Aさんの時計が遅れる。
図1:相対論的効果による時間の遅れ。AさんからBさんを見た場合は、Bさんの時間が遅れる。逆にBさんからAさんを見た場合は、Aさんの時計が遅れる。

これは「双子のパラドックス」とも言われる、有名なパラドックス(矛盾)です。
なぜ「双子」と言うのかといえば、話をおもしろくするために、AさんとBさんは双子という設定にするからです。
というわけで、ここでもAさんとBさんは双子ということにします。
どう見てもBさんの方が歳を食っているように見えますが、人を見かけで判断してはいけません!ヒゲが生えているからです、きっと。

ここで、こんな疑問が生まれます。
「AさんとBさんに、それぞれ時計を持たせて、後で比べたら、結局どちらの時計が遅れてるのだろう??」

結論から言うと
動くスピードや方向を変えているBさんの時計が遅れるのですが、それについて説明します。

■「比べる」には、同じ場所にいなければならない

まず「比べる」には、同じ場所にいる必要があります。

日本にいるAさんの時計と、アメリカにいるBさんの時計を比べようとしても、できませんね。
Aさんがアメリカに行くか、Bさんに日本に来てもらう必要があります。

「電話かメールすりゃいいじゃん!」と思うかも知れませんが、電話でもメールでも、「情報」を伝えるには、その情報をもった”何か”を相手まで届ける必要があります。
手紙ならば手紙、電話やメールならば電気信号を送るわけですが、「どんな物質も光より速く動くことはできない」と相対性理論からわかっていますから、情報の伝達スピードには、光の速度という上限があるわけです。

もちろん光で伝えるのが一番速いわけですが、そうなると光速度不変の原理などから色々ややこしいことが出てくるのです。
というか、冒頭で述べた
・AさんからBさんを見たときは、Bさんの時間が遅れ
・BさんからAさんを見たときは、Aさんの時間が遅れる
というのが、まさに光で情報をやりとりしたときに起こる現象なのです。
(このブログでは基本的に式は書かないので、数式で知りたい人は本などお読みください)

そのため、AさんとBさんの時計を比べたければ、2人が同じ場所にいる必要があります。
(時計だけ同じ場所にあれば、いいんじゃない?と、ツッコむ人もあるかもですが、本質的に同じだということは書く必要ないですよね??)

あるいは時空を超えたテレパシーとかをAさんとBさんがお互い使えればいいのですが、今回はAさんもBさんも、ふつーの一般人ということで、カンベンしてください。

■「比べる」には、加速・減速が必要

まず、AさんとBさんが同じ場所で時計をあわせてから、Bさんが出発するとしましょう。
ここでBさんは、実は改造人間で、奥歯のスイッチを噛むことで、光速の99.5%まで加速できることにします。
それならテレパシーくらい使えそうですが、あくまで一般人です。Bさんの動きを見てみると

図2:時計を比べるためのBさんの動き
図2:時計を比べるためのBさんの動き

1.Bさんは、どんどん加速していきます。
2.光速の99.5%まで加速したら、そのまましばらく走ります。
3.このままだとBさんは宇宙の彼方までいって帰ってきませんので、適当なところで減速します。
4.そのあとは(相対性理論の効果が無視できるくらい)ゆっくり帰ってくるとしましょう。

※よくある設定では、4でゆっくり帰ってくるのではなく、Aさんの方に向かって加速→等速直線運動→減速をするのですが、時間の遅れが2倍になるだけなので、ここでは、ゆっくり帰ってくることにします。

実はこのとき、特殊相対性理論をそのまま適用できるのは「2」のときだけです。(もちろん4もだけど無視)

というのも、特殊相対性理論の原理(前提)を思い出すと
・光の速度は常に変わらない(光速度不変の原理)
・電気と磁気の法則は、止まっている物体でも等速直線運動をしている物体でも同じ(特殊相対性原理)
というものでした。

図:相対性理論は「光速度不変の原理」と「特殊相対性原理」をもとに作られた理論。
図3:相対性理論は「光速度不変の原理」と「特殊相対性原理」をもとに作られた理論。

この「特殊相対性原理」をよく見ると、”等速直線運動”と書いてあります。
ということは、スピードが変わったり(等速じゃない)、動く方向が変わったりする(直線じゃない)場合には、特殊相対性理論は使えないのです!
こうした場合は、一般相対性理論を使わねばなりません。

なので実は「時計を比べる」ときには、一般相対性理論の効果も入れねばならなくなってくるのです。

※ただし、一般相対性理論を認めてしまえば、加速・減速中の時間の遅れも、特殊相対性理論の場合と同じ式が使えるので、Wikipediaの説明では特殊相対性理論の式が使われています。

で、それも踏まえて考えると、結局、時間が遅れるのはBさんの方になります。

■慣性力(かんせいりょく)がカギ!

Bさんの方の時間が遅れる理由を「一般相対性理論の効果だ!」とボカして書きましたので、これについてもうちょっと説明を加えます。

1~3のステップを、Aさんの視点から見ると、Bさんは
1.加速
2.等速直線運動
3.減速
と動いているように見えるはずです。

対して、Bさんから、Aさんを見たときにも
1.加速
2.等速直線運動
3.減速
と見えるはずです。

これだけ見ると、まったく同じで対称的なのに、どうしてBさんの方の時間が遅れることになるのか。

その秘密は、Bさんが加速(1)や減速(3)をしているとき、本当は動きが対称じゃないからです。
なぜなら、このとき、Bさんは力を感じているはずだからです。

車や電車に乗っていると、加速するときには後ろに引っ張られる力、減速するときには前につんのめりそうになる力を感じると思います。
満員電車で目の前にきれいなお姉さんが乗っているときに急ブレーキがかかると、ついお姉さんの方につんのめってしまって美味しい思いができるといいなー、と思いつつ
現実には目の前にいるのはオッさんで、オッさんのハゲ頭にぶつかってしまうというあの力です。
この力は 【慣性力(かんせいりょく)】 と呼ばれるもので、加速したり、減速したり、あるいは動く向きが変わったとき(これらをまとめて「加速度が0でないとき」と言います)に感じる力です。

Bさんが加速(1)や減速(3)をしているとき、Bさんはこの慣性力を感じます。
一方、Aさんが慣性力を感じることはありません。だって加速したり、減速したりしているのはBさんですから。隣の人が走り出したからといって、自分が急に後ろに引っ張られることはないのと同じです。
つまり、ここで、AさんとBさんの動きは対称ではないことが分かります。

図4:加速・減速中、Bさんは慣性力(かんせいりょく)を感じる。
図4:加速・減速中、Bさんは慣性力(かんせいりょく)を感じる。

これがBさんの方の時間が遅れる理由です。

これを一般相対性理論から説明すると、加速・減速・運動の方向が変わるとき(加速度が0でないとき)には、時間が遅れるので、結局、時間が遅れるのはBさんの方になります。

■今日のまとめ

・あとから時計を比べる場合、加速・減速・運動の方向が変わる側(加速度が0でない側)の時間が遅れる!

※細かい計算が気になる方は、Wikipediaか物理の本をお読みください。

コラム:「分かる」ことと”世界観”

アインシュタインが特殊相対性理論を発表したとき、この理論を”理解できた(分かった)”のは、世界で5人に満たなかったといいます。

この話の真偽はさておき、特殊相対性理論から導かれる結論は、それほど僕らの日常感覚からはかけ離れたものだということでしょう。

特殊相対性理論そのものは、大学2年生でやるレベルのもので、それほど難しいものではありません。
有名な「時間の遅れ」や「長さの縮み」くらいならば、中学レベルの算数ができれば、導けるほどです。

そのような(ほかの理論に比べれば)決して難しくはない理論である特殊相対性理論が、なぜ「世界で5人も理解できなかった」といわれるのでしょうか。

それはおそらく、当時の人々に「時間や空間(長さ)は変わらないもの」という固定観念が強固にあったために、特殊相対論の世界観を理解できなかったのではないかと思います。

僕ら1人1人が世界をどのように見ているか、を1人1人の【世界観】といいます。

人は、自分の世界観にあわないことは、はねつけたり、否定したり、無視したりするものです。

たとえば
・「地球の周りを太陽が回っている」と信じている人には、地動説など信じられないでしょうし、
・「神が人間をつくった」と信じている人にとっては、「人間がサルから進化した」などという理論は、狂人のたわごとに聞こえるに違いありません。
(実際、アメリカでは”進化論”を学校で教えない州さえあるのです!)

特殊相対論が発表された当時の人々も「時間や空間が、人によって異なる」なんてことは、とても理解できなかったに違いありません。

人間はうぬぼれ強い生き物で「自分の信じていることこそが正しい」と盲信しています。
しかも、さらにたちが悪いことには「自分が何を信じているのか」も分かっていない人がほとんどです。
なぜなら、本人はそれを「常識」や「疑う余地のない真理」くらいに思っているからです。

それゆえ、自分の「常識(という名の固定観念)」に反したり、自らの世界観から外れたことを見たり聞いたりすると、僕らはそれを「間違い」と考えます。
(自分が間違っている可能性を考えるのではなく・・・)

その点、それまでの人たちにとって「常識」だった「時間や空間は変わらないもの(絶対空間・絶対時間)」という固定観念を、根底からぶち壊したアインシュタインは、まさに世人の蒙を啓いたといえるでしょう。

現代の僕らにも、無意識に信じている固定観念が、どれだけあるか分かりません。

アインシュタインの
常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションである
という言葉を深くかみしめずにはおれません。

立場によって見え方が異なるのが相対論

特殊相対性理論から分かることとして
・「自分が動いていること」は他と比べてみないと分からない(「相対性」ってなんだ?
・絶対時間、絶対空間というものはない(相対論が、時間と空間についてのふざけた幻想をぶち殺す!
ということを書きました。

このことをさらに考えると、
「動いている」「止まっている」というのも相対的なものだ
と分かります(これがまさに「相対性」理論といわれるゆえんです)

電車に乗っているときに、反対側の電車が後ろに動いているのを見ると
・向こうの電車が後ろに動いているのか
・自分の電車が前に動いているのか
分からなくなるのと同じです。
(電車の場合は、周囲の景色と比べることで、どちらが動いているのか分かりますが)

ということは、相対性理論による「時間の遅れ」や「長さの縮み」も、立場によって見え方が変わることになります。

■立場によって見え方が異なる

まず時間の遅れについて見てみます。

止まっているAさんから、右側に動いているBさんを見たとき、
Bさんの時間は、Aさんに対して遅れます。

ところが、これをBさんの立場から見ると
Bさんが止まっていて、Aさんが左側に動いているように見えます。
このとき、Aさんの時間は、Bさんに対して遅れるのです。

図1:相対論的効果による時間の遅れ。AさんからBさんを見た場合は、Bさんの時間が遅れる。逆にBさんからAさんを見た場合は、Aさんの時計が遅れる。
図1:相対論的効果による時間の遅れ。AさんからBさんを見た場合は、Bさんの時間が遅れる。逆にBさんからAさんを見た場合は、Aさんの時計が遅れる。

わけがわからないよ、という感じがすると思いますが
「動いている」「止まっている」というのは相対的なもの
とは、こういう意味なのです。

同じように、長さの縮みについても考えると

AさんからBさんを見たときには、
Bさんは、右方向に動いていて、しかも縮んで見えます。

BさんからAさんを見たときには
Aさんが、左方向に動いていて、縮んで見えます。

図1:相対論的効果による長さの縮み。AさんからBさんを見た場合は、Bさんが縮んで見える。逆にBさんからAさんを見た場合は、Aさんが縮んで見える。
図1:相対論的効果による長さの縮み。AさんからBさんを見た場合は、Bさんが縮んで見える。逆にBさんからAさんを見た場合は、Aさんが縮んで見える。

「時間の遅れ」と「長さの縮み」の両方をまとめると、結局、次の図のようになります。

図1:相対論的効果は、どの立場から見るかによって異なる。AさんからBさんを見た場合は、Bさんの時間が遅れ、長さが縮んで見える。逆にBさんからAさんを見た場合は、Aさんの時計が遅れ、長さが縮んで見える。
図1:相対論的効果は、どの立場から見るかによって異なる。AさんからBさんを見た場合は、Bさんの時間が遅れ、長さが縮んで見える。逆にBさんからAさんを見た場合は、Aさんの時計が遅れ、長さが縮んで見える。

一体、どっちやねん!
と言いたくなるのですが、「どちらの立場から見ているか」が違うだけで、どっちも正しいのです。

このように
「時間(の進み方)」も「長さ」も、どの立場から見るかによって変わる
というのが、特殊相対性理論から分かることの1つです。

■速度が変わっている方の時計が遅れる

とはいえ、時間の進み方については
Aさんの時計と、Bさんの時計を後で比べれば、”本当に時間が遅れている”のはどちらか分かるのではないか?
という気がします。
実際、その通りです。

では、2人の時計を比べたときに、”実際に遅れている”のはどちらなのか。
結論を言えば、速度が変わっている方の時計が遅れるのですが、それについてはまた次回。

動いているものは縮んで見える

特殊相対性理論によれば、
動いているものは長さが縮んで見えます。

例をあげると

・その場に止まって(かっこよく言うと”静止”して)いるAさんが
・止まっている宇宙船を見たとき、その宇宙船は全長10mだったとします。

ここで「全長」とは、宇宙船の先頭から末尾までの”長さ”です。

ところが
・その宇宙船が動いているとき(たとえば光速の99.5%で動いているとします)に
・Aさんから宇宙船を見ると、その全長は縮んで見えます。(光速の99.5%の場合、10分の1に縮んで見えます)

図:静止しているAさんから見た、宇宙船の長さ。宇宙船が止まっている時と、宇宙船が動いている時で、全長が異なって見える。なお、どう見ても宇宙船には見えないが、気にしてはいけない。
図:静止しているAさんから見た、宇宙船の長さ。宇宙船が止まっている時と、宇宙船が動いている時で、全長が異なって見える。なお、どう見ても宇宙船には見えないが、気にしてはいけない。

僕の身長が低く見えるのも、実は僕がものすごいスピードで動いているからで、本当の僕は身長180cmのディカプリオ風なイケメンなのです。ここ、間違えないように。

ちなみに、このとき”長さ”が変わって見えるのは、宇宙船が動いている方向の長さだけ(ここでいう全長)で、幅や奥行きは変わりません。

この「動いている物体の長さが縮むこと」は、何回か前にお話した「動いている物体の時間の遅れ」と共に
・存在することと、見えることとの関係は?
・時間とは何か?
・空間とは何か?
といった、僕らの世界観に非常に重要な示唆を与えてくれるのですが、それについてはまた次回以降に書きたいと思います。

今回は短めに。

「相対性」ってなんだ?

大きな客船に乗っていると揺れもほとんどないため、船に乗っていることを忘れてしまいます。
甲板に出てみて初めて船が進んでいることに気づいたり。。

実はこれが、相対性理論の「相対性」のカギだったりします。

相対性理論の「相対性」とは、どういう意味か?というお話です。

続きを読む

相対論は、時間の”感じ方”が変わるのではない

相対論の「時間の遅れ」を話したとき、よく起こる誤解が
「人によって時間の”感じ方”が違うってことでしょ?」
という誤解です。

はっきり言って、そういうことでは全く無いことを補足します。

■”感じ方”が変わるのではない。本当に「時間の流れ」が変わるのだ。

日常の中で、時間の”感じ方”が変わることはよくあります。

好きな人と一緒にいるときや、趣味に打ち込んでいるときは、あっという間に1時間経ったように感じますし、
嫌いな人といたり、退屈な作業をやらねばならないときには、1時間がとても長く感じます。

これらは、あくまで”感じ方”であって、「1時間経った」という事実は変わりません。
時計の針は、1時間先に進んでいます。

対して、相対性理論によれば、
動いている物体は、時間の進み方が遅くなる。
つまり、時間の”感じ方”が変わるのではなく、本当に時間が遅れるのです。

例として
・その場に止まっているAさんと
・Aさんに対して、光の速さの99.5%のスピードで動くBさん
とを考えると

Aさんが持っている時計が60分進んだとき、
AさんからBさんの時計を見ると6分しか進んでいない
と相対性理論は言っているのです。

図:Aさんに対して、光速の99.5%の速度で動くBさんの時計は、10分の1しか進まない
図:Aさんに対して、光速の99.5%の速度で動くBさんの時計は、10分の1しか進まない

つまり、時間の”感じ方”ではなく、”時間の流れ”そのものが遅れるわけです。

■時間の”感じ方”は心理学的・脳科学的なもの

もちろん、時間の”感じ方”が変わることはあります。

しかし、それは心理学的・脳科学的に解明すべきものであって、そこにアインシュタインの相対性理論を持ってくるのはナンセンスです。
(1兆分の1くらいは、相対性理論の効果が効いているかも知れませんが、その程度です)

また、実年齢より10歳以上若く見える「美魔女・美魔男」や
年齢より年上に見える「フケ顔」の方もいますが、
これらは生物学的な理由によるものであって、相対性理論を持ち出すのはお門違いです。

なにせ相対論の効果は、非常に小さく
時速300kmの新幹線に乗ってさえ、ほんの0.000004%時間が遅れるだけなのです。
つまり3日間(=72時間)、新幹線に乗りっぱなしで、ようやく1秒遅れる程度のもの。

それほど日常では相対論的効果は小さいからこそ、僕らの日常の感覚からすると、相対性理論に違和感さえ感じるのだともいえるでしょう。

相対論が、時間と空間についてのふざけた幻想をぶち殺す!

この文章を読み終えたとき、あなたは
「『時間』というものを全くわかっていなかった」
ということに気づくでしょう。

途中の話は、詳しい人ならば知っている話もあると思いますが、ぜひ最後まで読んでいただきたいと思います。

■動いている物体は、時間の進み方が遅くなる

特殊相対性理論から導かれる重要なポイントの1つが
動いている物体は、時間の進み方が遅くなる
ことです。

図:相対性理論は「光速度不変の原理」と「特殊相対性原理」をもとに作られた理論。
図:相対性理論は「光速度不変の原理」と「特殊相対性原理」をもとに作られた理論。

・その場に止まっているAさん
・Aさんに対して、光の速さの99.5%のスピードで動くBさん
を考えましょう。

地球上でこんなスピードで動いたら、衝撃波で周囲数kmの地面はえぐれ、建物は粉々になる上、風圧でBさんの体はぺしゃんこになってしまいますので
Bさんは宇宙空間でも生きられて光速の99.5%で走ることができるとします。何者だ、Bさん。

このとき、Aさんが10年分歳をとる間に、Bさんは1年しか歳をとりません。
なんというアンチエイジング。将来は「相対論アンチエイジング」が流行るに違いありません。

Aさんからすれば「Bさん、ずるい!私も相対論アンチエイジングする!」という話ですが、
Bさんからすれば、1年しか経たない間に、Aさんが10年歳をとっていたわけですから、未来へのタイムトラベルに成功したといえるでしょう。
おとぎ話の『浦島太郎』に似ているので、これを「ウラシマ効果」と呼ぶこともあります。

動くスピードが早くなればなるほど、時間の進みは遅くなりまして
・光速の90%の速度で動くと、0.44倍
・光速の99%の速度で動くと、0.14倍
・光速の99.5%の速度で動くと、0.10倍
と、時間の進み方が遅くなります。

ちなみに『浦島太郎』が相対論の効果によるものだとすれば、
浦島太郎は、光速の99.999999962%という、とてつもない速度で動いていたことになります。
(竜宮城で3日過ごす間に、地上では300年経っていたとした場合)

■一人ひとり時間の進み方は異なる

さて「時間が遅れる」ことの意味を考えてみると
僕ら1人1人の時間の進み方は異なる
ということが分かります。 続きを読む

相対論の意味:E=mc^2について

前回(相対性理論について普通の人の3倍詳しくなる話)までで

【特殊相対性理論】とは

1.「光速度不変の原理」光の速さは常に変わらない
2.「特殊相対性原理」電磁気の法則は、止まっている物体でも、等速直線運動している物体でも変わらない

の2つの原理を元に導かれる理論だというお話をしました。

図:相対性理論は「光速度不変の原理」と「特殊相対性原理」をもとに作られた理論。
図:相対性理論は「光速度不変の原理」と「特殊相対性原理」をもとに作られた理論。

物理の教科書ならば、ここで方程式を書いたりするわけですが、
おそらくこれを読んでいる方の99%は、方程式に興味などないと思いますので、相対論が示すこの世界の予想について見ていきましょう。

※式の導出までやりたい人は、そういう教科書などを読んでみてください。
理系学生なら、大学2,3年で学ぶ内容なので、そこまで難しくはないです。

まず最初は、物理学でもっとも有名な式といわれる
E=mc
について、その意味を考えていきます。

相対性理論から導かれるこの式は、シンプルながら奥深い意味を持ちます。

続きを読む

相対性理論について普通の人の3倍詳しくなる話

よく耳にする「相対性理論」とは何なのか。(歌手の方ではない)
案外、誰も知らない相対性理論について、少し詳しくなりましょう!という記事です。

ちなみに相対性理論について詳しくなると、こんなことができます。

○飲み会の席で、相対性理論について熱く語れる
→ 「空気の読めないヤツ」という称号が手に入る!

○上司が「これが相対性理論というヤツだよ、キミィ?」と言ってきたとき、その間違いを論破できる
→ 上司との関係が悪くなる!

○アニメや漫画で「相対性理論」という言葉が出てきたとき、「本当にこの作者わかってんのか?」と斜めに読むようになる
→ アニメや漫画を心から楽しめなくなる!

こんな素敵でユカイな相対性理論についての知識が、通常79,800円(税別)のところ、なんと今なら無料で読めてしまいます!
「これはお得!すぐに読むしかない!!」という方は以下をどうぞ。

ちなみに「相対性理論」のことを「相対論」ということもありますが、同じ意味です。Theory of relativity(相対性の理論) の訳し方が違うだけです。

続きを読む

物理の法則はどのように作られ、正しいと認められるのか(相対性理論を例に)

アインシュタインの「相対性理論」とは何か。

そもそも

物理の法則はどのように作られ、正しいと認められるのでしょうか。

 

【相対性理論】という言葉を聞いたことのない人は、いないでしょう。

では言葉は聞いたことがあっても、【相対性理論】とは何か、理解している人はどれだけあるでしょうか。
「あ、アインシュタインのあれでしょ!」 とか

「E=mcだよね!」 とか

「物が伸びたり縮んだり、人によって時間が違うんでしょ」 とか

「君と一緒にいると、時間があっという間に過ぎてしまうよ。これを相対性理論っていうんだね」 とか

 

理解や言葉の使い方は、人によってさまざまで、正しく概念をとらえている人は少ないように思います。

特に最後のは、違う。

 

そこで、相対性理論とは何か。また、それが意味することは何か。

一般の人にもわかるように、数式を使わずに説明したいと思います。

 

■1.科学理論は、過去の理論も含んでいないとダメ

特に今回は 【特殊相対性理論】 について説明します。

「相対性理論」について聞く話は、たいてい、この【特殊相対性理論】の話です。

 

なぜ「特殊」というのかといえば

アインシュタインが発見した別の理論に 【一般相対性理論】 というものがあるので区別するためです。

【一般相対性理論】のうち、特殊な場合だけ成り立つのが【特殊相対性理論】なので「特殊」とついています。

包含関係としては、このような感じです。

物理法則の包含関係
図1:物理法則の包含関係

 

図1を見れば分かるように、

【特殊相対性理論】自体も、ニュートン力学(高校までで習う物理学)や電磁気学(+-といった電気や、磁石の力についての学問)を包含しています。

包含しているという意味は、「特殊な場合だけ成り立つ」ということで

動いている物体のスピードが、光の速さより十分遅い場合には、

【特殊相対性理論】の計算結果は、ニュートン力学や(それまでの)電磁気学と同じものになります。

 

これは当たり前で、今までの理論で正しかったものを再現できなければ、その理論は認められないわけです。

このように、科学の理論は、すでにできあがった理論を包含する形で広がっていきます。

 

■2.相対性理論の2つの【原理】と、【理論】が作られる流れ

前フリが長くなりましたが、

結論から言うと、

【相対性理論】とは、次の2つを前提としたときに「自然に導かれる」理論です。

・光の速度は常に変わらない

・電気と磁気の法則は、止まっている物体でも等速直線運動をしている物体でも同じ

 

物理の法則というものは、すべて「何かを前提」として作られています。

その前提のもとに理論を組み立てていって、それが実験の結果をうまく説明できたならば

「その前提も正しそうだ」ということが分かるという仕組みです。

原理→理論→予想 ←← 実験による検証
図2:物理法則が作られ、検証される流れ

このときの”前提”のことを 【原理(げんり)】 と呼んだりします。

つまり、この前提(原理)が正しければこうなる・・・と理論をつくっていくわけです。

そうやって前提から、数式ができあがったときに、この数式を 【理論】 とか 【法則】 と呼びます。

 

数式ができたならば、その数式を使って 【予想】 をすることができます。

たとえば「時速○kmで動いている物体の時間は△秒遅くなるはずだ」といった形ですね。

 

そして、その【予想】があっているかどうか、 【実験結果】 と照らし合わせるわけです。

この照らし合わせのことを 【検証(けんしょう)】 といいます。

 

もちろん、ここで【実験結果】をうまく説明できなかったら、その理論は間違いです。

ただし、【実験結果】をうまく説明できるだけでは 「正しい」 とされるには不十分です。

なぜなら、すでにある【実験結果】に合うように理論を作った可能性があるからです。

 

なので、その理論が「正しい」と認められるためには

・今まで誰もやってない実験の結果を、理論から【予想】した上で

・その実験をしてもらって、理論の予想通りになるかを確かめる、

ということが必要になります。

 

この【実験】をするまでに時間がかかることも多いので、

物理のノーベル賞は、論文が出てから何十年後にもなって受賞されることなどが多くあります。

 

ここで、【原理(前提)】→【理論(法則)】→【予想】という、それぞれのステップは

論理的・数学的に計算されているので、途中のステップに間違いが入ることは(計算ミスをしていない限り)ありません。

なので「理論が間違いだった」ということは、そもそもの前提としている「原理が間違っていた」ということなわけです。

 

と、書いているうちに、ずいぶんと長くなってしまいました。。

なので、相対性理論の説明は次に回したいと思います!(あれ?)

 

○今日のまとめ

・物理の法則(理論)は、今までにあった理論を含む形で発展していく

・すべての【理論】は、なにかの【原理(前提)】から作られている

・【理論】から【予想】がされ、その予想が【実験結果】にあうかどうかで

 理論の正しさ(=前提の正しさ)が判断される